それぞれのバンドーラにおいて無数に存在する巨匠たちの中からほんの一部を紹介し、バンドーラ演奏の観点から短い解説を加える。
・バンドーラ・ジャネーラ:イスマエル・ケラーレス Ismael Querales (1953-)
バンドーラ奏者であるだけでなく、「ウン・ソロ・プエブロ」 Un Solo Puebloのリーダーであることをはじめ、パーカッション奏者、歌手、作曲家であり、ベネズエラ伝統音楽界における最も重要な人物の一人である。バンドーラ・セントラルやオリエンタルも演奏し、ホローポ・セントラルの影響を受けたバンドーラ・ジャネーラのスタイルが特徴的である。5弦ないし5コースのバンドーラである「キントーラ」 quintolaの創始者でもある。
・バンドーラ・オリエンタル:リカルド・サンドバル Ricardo Sandoval (1971-)
ラテンアメリカのあらゆるジャンル・弦楽器を熟知し、ドイツに渡りクラシックマンドリンを修める。バンドーラもオリエンタルのほか、セントラル、ジャネーラを演奏する。若くしてホローポ・オリエンタルの形式に基づいて作曲した「エル・クルサーオ」 El Cruzaoは、不朽の名作として、現在も無数の演奏家によって取り上げられている。
・バンドーラ・セントラル:フアン・エステバン・ガルシーア Juan Esteban García (1927-2005)
グアリコ州グアリーベ Guaribe, Edo. Guáricoでバンドーラによって演奏されるホローポ・セントラルの大家であり、同ジャンルのバンドーラのテクニックを革新し、無数の名曲を生み出した。その功績により多くの尊敬を集め、人間国宝に認定される。イスマエル・ケラーレスもリカルド・サンドバルも、フアン・エステバンの手ほどきを受けている。
・バンドーラ・グアヤネサ:チェオ・ウルタード Cheo Hurtado (1960-)
言わずと知れたベネズエラ・クアトロの巨匠であるが、バンドーラをはじめとするさまざまの弦楽器の名手である。バンドーラ・グアヤネサの演奏により、故郷ギアナ地方の伝統音楽の存在を世に認知させた。とくにその「セイス・グアヤネス」の演奏は、象徴的である。